父からの手紙
去年の今頃だったか?
仕事でお礼状を書こうと慣れない縦書き便箋探し出すと、そこには送りそこねたのか?
平成13年に他界した父が、私の姉夫婦宛に書いた手紙がありました。
もう亡くなって10年も経つのに、その「前略」から始まるきちっとした文章や男の人にしては、やや線の細い字体…
それでいて、お茶目で、やんわりとお願いをする文章を読んだら、懐かしくて気がつくと次から次へと涙が、こぼれていました。
内容はというと…
電話でも済んでしまうような要件と東京にいる姉夫婦と会いたいという事。
ただ、自分の子供に向かって「何故か?この頃、お二人を恋しく思い出します」って、
60歳近い男の人がこんなに素直に自分の気持ちを文章にするのかな?と思うような書き出しに
生前優しかった父の事を思い出さずには、いられませんでした。
本が大好きで、今でも書斎には父の残した歴史本や政治本、時代小説から哲学の本まで、
いろいろなジャンルの本があります。
母から、お父さんは文学青年でね…と二人が出会った頃の事を聞いた事があります。
手紙を書いた当時、家の一部をリフォームしていた母は忙しく、相手にしてもらえず
でも自分は今すぐにでも子供達に会いに東京へ行きたいのに
そうできないジレンマをこの手紙に書いたのでしょう。
普段自分の気持ちを数多く話す父ではなかったので、きっと書くだけ書いて
出さずに閉まったのかもしれませんね。(父らしい…笑)
なかなか本音を口にする事がなかった父
先生から癌と告知された後も家族に八つ当たりする事もなく静かに逝った父。
「自分の体で使える臓器かあるなら、どうぞ誰かのために使ってください。」と臓器提供を自ら先生へ伝えていた父。
会社の仕事で必要最低限な事は、伝えてくれたのだろうけど、
口の重い父が亡くなった後の会社の雑務は、正直大変でした…。
亡くなった父に、聞きたい事が山ほどあって、言いたい事も山ほど増えて、
お墓参りに行っては、愚痴をこぼしていました。
そのせいか?毎年、お盆にお墓参りへ行くと、必ず「お盆の間に枕元へ出てきてください」とお願いしていますが、
未だに一度も出てきたためしがありません。もう愚痴は言わないのに…。
『たまには会いたいものです』
昨年の秋、そんな願いが叶ったような気がした10年ぶりの父からの手紙でした。
父の事を長々と書いてしまいました。読んでいただき、ありがとうございました。